『減らす技術』

マニャーナの法則に関連した本を探していたところ、takahrt(富山孝裕)さんに副読本的にとレオ・バボータ著「減らす技術」を教えていただきました。Kindle版を購入して読み進めています。旧版では本の装丁が綺麗だったとのことで、機会があれば単行本を手にとってみたいものです。ちなみにマニャーナの法則の関連本としてダニエル・カーネマン著「ファスト&スロー」のKindle版が安かったので購入して、少し読み進めて挫折、目下、積ん読状態です。

 

減らす技術を読み進めているなかで、試してみたいこととして『制限値を決め、習慣化する』というものがありました。

たとえばメールチェックの回数を制限する場合、今まで何年もメールをチェックしてきた経験を踏まえたうえで、合理的な数を選ぼう

これはタスクを実行する基準となるトリガーを決めることであり、トリガーは増やす方向だけでなく、減らす方向でも働かせることもできそうです。

 

また、以下の点も参考になりました。

本質に迫ることに集中するためには「ノー」と言うことが欠かせない
(中略)
すると、人はあなたの時間を大切にしてくれる。あなた自身が自分の時間を大切にしていればこそ、それがかなうのだ。

自分の時間を大切にしようと思いつつ、ついつい頼まれた仕事を断れきれないきらいがある我が身には、本だけに、耳の痛いならぬ、目に痛い話です。

 

さて、この減らす技術をKindle版で読み進めている時にiPhoneiOSの読み上げ機能によってKindle本を聴く方法というものを知り、感動を覚えて、早速試してみました。なお、知ったのはtoricagoさんのブログ記事(『お金のPDCA』を読んで、速攻で取り組んだことの詳細報告 - toricago)で、詳しい方法を調べた際に参考にさせていただたのはなごみさんのブログ記事(【簡単】iPhone iOSの読み上げ機能でKindle本を聴く方法。手ぶら読書でサクサク読める。 | ゆるりまあるく)からです。この場を借りてお礼を申し上げます。

 

さっそく減らす技術の読み上げを少し読むスピードを早巻きで聞きながら、洗濯機を回すために洗濯物を選り分けていると、書中で「スピードを落とそう」「各タスクを楽しもう」「他のことを考えながらやるのはやめよう」の箇所に差し掛かり、聞きながらドキッとしました。これはまさに自分のことだと思い、これこそ、耳の痛い話でした。読み上げだけに。

 

そんなわけで、まだ読み進めている途中ではありますが、これからも参考となりそうなことが書かれていそうなので、引き続き本を読むという良い意味で刺激される贅沢な時間をなるべくシングルタスクにすることを心がけながら読み進めていきたいと思います。

 

タスク管理の評価軸

タスク管理システム(手法)を自分に合ったものを取り入れる、もしくは自分で工夫をする際に気にかける評価軸が一人一人あるかと思われます。例えば以下にあげた項目です。

  • 楽しさ
  • 効率
  • スピード
  • リマインド
  • 記録(のつけやすさ)
  • 振り返り(レビュー)(の容易さ)
  • 達成感
  • 難度

 

個人的には、

  1. 楽しさ
  2. 何を成し遂げられたか
  3. リマインド

の順番で優先して選んでいるところがあります。

 

楽しさ

やはり、楽しくないと物事が続きませんし、工夫しようという気持ちも起きにくいものです。今は、マニャーナの法則が楽しくて、もっとタスク管理システムに取り入れないか検討しているところです。書中にある最高のモチベーションは何から生まれるか?の問いに対する

 

「仕事が予定どおり進んでいる」と実感する時です。


との答えに、最初は、いやいやそんなことはないだろう、その程度でモチベーションは上がらないだろうと半信半疑でしたが、実際マニャーナの法則に従い仕事が予定どおりに進み出すと、モチベーションが湧いてきているところを振り返ると、逆にモチベーションが著しく下がるのも「仕事が予定どおり進んでいない」と実感する時なのだということを思い知らされた気持ちです。

 

何を成し遂げられたか

そのタスク管理手法によって何を成し遂げられたか、これは別に大きな目標とかに限らず、小さなことでもこれができるようになった、実現したなといったことです。いわばそのタスク管理手法によるアウトプットの評価です。あとでまた同じようなタスクが現れた時に、このタスク管理ならば乗り越えられるかもといったことの参考にします。

 

リマインド

適切な場所、適切なタイミングで、適切なシチュエーションでタスクが思い出せて、実行に移せるかといったことです。どんなに優れたタスク管理手法であっても書いたタスクが思い出せず、実行に移されないのでは意味がありません。頭の中に浮かんだタスクをそのままにしておくとほとんどのタスクは忘れ去られていくものです。ただし、全てをやろうとするとすぐにオーバーフローにつながるので、忘れるということも大事なのかもしれません。

 

これは人によるとは思いますが、自分自身がタスク管理をしているからなのか、人に頼まれたことはタスクリストに残っているためよく覚えているものですが、頼んだ本人はすでに忘れているということを見るにつけて、言われたこと全てをやる必要はないということを、その人もたまたま思ったことを口に出しただけの時もあるので、本当の仕事というのは、その中から自分で取捨選択して、判別して、アウトプットして、評価されてこそなのだと思います。

 

また、逆もまた真なりで、自分から人に頼んだことも全てやってもらっているのは稀で、(相手が別の仕事でオーバーフローしているというのもあるかもしれませんが)それもまた、相手もその中から自分で取捨選択して判別してアウトプットしているのだと思うところもあります。ボールを投げた相手にとっても本当の仕事となるようなタスクを投げられるようにしたいものです。

 

マニャーナの法則で説くバッファー・ゾーン

よくタスク管理では、バッファやスラックといったすき間や余裕を持つことが重要であると説かれているのを見かけます。

 

そもバッファとは、ここではマニャーナの法則から

 

仕事とは心理的距離を取る必要があり、バッファー・ゾーンはその距離のことを指している。これがあると新しい仕事に反射的に反応せず、緊急度を判断し、どのように取り組むかなど、適切な判断をした上で取り組むことができる。

 

そもスラックとは中島聡さんの『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』から

 

みなさんがいつも「持っておけばよかった…」と後悔する余裕のことを、「スラック」といいます。スラックとはたるみ、緩みなどを意味する言葉で、転じて心理的な余裕のことを指します。

 

このようにバッファやスラックを持つことは、タスク管理を進める上で不確定要素(割り込みのタスクに対応したり、タスクを進めていく上で新たに判明したタスクへの対応)の発生に対応するためにも重要であることが説かれます。

 

では、そのバッファやスラックを獲得するにはどのようにすればいいのでしょうか。よくあるのは、タスク管理をした結果として、授受すればいいと説かれます。そのためのタスク管理であると。でも、果たしてそう簡単にいくのでしょうか。タスク管理ができていないからバッファやスラックを得られない。では、タスク管理をしましょうでは、トートロジーです。

 

一方、マニャーナの法則は、基本的にタスクを「明日やる」というシステムを作り出します。この「明日やる」というシステム自体に明日までのバッファーを設けているのです。これならば、とりかかった時点からバッファーが生まれることになります。他のタスク管理手法では得られない大きな利点だと思います。

 

タスク管理のプロセス

様々なタスク管理の手法がありますが、おおよそ以下のプロセスをそれぞれ独自の方法を取るのではないでしょうか。

認識→判断→収集→実行→記録→検証→調整

認識

まずは、それが「ある」ことを認識することが必要です。「それ」とは情報であったり、アイデアであったり、感情であったりと様々です。また、「ない」という状態が「ある」ということで、「ない」も「ある」に包含されます。ここではまだ概念でしかありません。

 

判断

次に、それが何か?という判断を行います。GTDでいうところの「処理(これは何か?)」を含みます。分類に2種類あります、カテゴリ分けと自分と自分以外とです。カテゴリ分けは、それが情報なのか、アイデアなのか、タスクなのかといったところです。自分と自分以外とが、7つの習慣でいうところの影響の輪と関心の輪であり、マニャーナの法則でいう興味の範囲とコミットメント(引き受けるという宣言)です。

 

収集

次に、それをどこに?というプロセスです。判断した後に、適切な場所に集めることになります。頭の中に置いておくだけでは、どこかにいってしまいますので、メモ(紙媒体か電子媒体)をすることで、概念が文字という実態を持つことになります。各種リストの形を取ることが多いです。この過程をデザイン(計画)と言い換えることもできます。また、紙に書く(文字にする)ことで、なにが足りないのか分かったり、衝動の脳を押えたりします。

 

実行

タスクに対して、次の行動は?というプロセスです。次の行動が分からないタスクは実行されにくいです。例えば、あるタスクを実行していて、新しいタスクが発生した時点で別のタスクを行うようにすると、再び元のタスクを実行しようとしたときの障害が低くなります。一区切り終えて次に何をしようかといった状態で手放すと、次にそのタスクに着手するのが億劫になります。タイマー、ライフログをとるなどから実行に結び付ける副次的な効果があります。

 

記録

実行をサポートしてたタイマー、ライフログなどから記録に残すことで、この次の検証のプロセスに結び付けます。昨日悪かった部分は、今日は良くしよう、昨日良かった部分をさらに良くしようと思う際に記録があると次のプロセスである検証(振り返り)が容易になります。日記やメモも役に立ちます。

 

検証

振り返り、レビューと言ったことが相当します。実行したタスクが効果的であったかどうか、また他に目的に沿ったもっと効果的なタスクを実行するべきではないかと言った問いを持つようにします。

 

調整

検証結果を踏まえて次に行うタスクを考えます。これまで行ったプロセスやシステムに問題がなかったかどうか調整します。

 

タスクが発生した際にそのタスクの中に「今すぐ」と「今日中に」が含まれていないかスクリーニングにかける

マニャーナの法則では、全てのタスクを明日やることを基本にはしていますが、まず肝心なのはタスクが発生した際にそのタスクが「今すぐ」なのか「今日中に」なのかを判断するプロセスがあるということです。タスクの中に「今すぐ」と「今日中に」の要素が含まれていないかスクリーニングにかけるようにしています。

 

その前に、

新しい仕事が来たら、引き受ける前に必ず「この仕事は、既存の仕事より価値があるのか?」をまず自分に問いかけることです。

 

タスク管理の基本として、タスクそのものがないこと(タスクそのものが無くせないか)に勝る効率的なことはありません。そしてそれがノーであるならば、ノーを上手に言える人になる必要があります。その上で、対話でいえば、期限に関わる単語に気を配ります。

 

文書でいえば、斜め読み(7回読み勉強法でいうところサーチライト読み(上下左右ジグザグに読む))で探ります。この時に明確に期限が書かれているものは、わかりやすいです。文章の内容から「今すぐ」なのか「今日中に」なのか汲み取る必要があったり、よくあるのが上司からメールで期限が区切られていない時など、期限を区切らない=いつでもいいんですね(意訳)と思っていると存外締め切りが近かったりするので、ここは確認が必要になることもあります。ここでも基本的なスタンスは明日やるです。

 

事象でいえば、GTD的に2分以内で完了ようなもの、もしくは「明日やる」とすると余計に時間がかかりそうなもの、例えばファイルに綴じるようなタスクで、綴じようとしていたファイルを探し出さないといけないとかで判断します。ただし、2分以内といいつつ、それが積み重なると他のタスクを圧迫しだしたり、スーダラ節ではありませんが、ちょいと一杯のつもりで飲んでいつの間にやら2分以上が経過していたりするので、油断は禁物です。こういったときにタスクシュートでタスクの見積時間を入れて多くと防ぐことができます。

 

書類がデスクの上で、右と左とで行き来する

タイトルだけではなんのことやらですが、マニャーナの法則を試していると、主に職場のデスクで書類が右と左とで行き来することになっています。よくある決裁箱(未決と既決)はスペースをとるため置いていないのでこのような現象が生じています。2段組のレターケースも考えましたが、書類の厚みに耐えきれないので諦めました。そもそも、そんなに仕事をためてはいけないのかもしれません。

 

具体的には、当日処理する書類が右手側にあるとします。この時、前日に処理する順(タスクシュートの順)に書類を並べ替えておくと上から順に処理していけばいいだけになり、書類探しに邪魔されずシームレスに作業に没頭できます。

 

右側の書類を手に取り、目の前には処理する書類だけがある状態で処理を進めます。処理が完了したら書類を処分します(保存する場合はpdfに、必要なければ廃棄)。処理をした時に新しいタスクが発生した(何か別の調査が必要だとか)段階で「明日やる」として、書類を左側に置いていくようにします。

 

1日が終了した時に全ての書類が左側に移っている!ってなことはまれで、大抵、処理しきれなかった書類の束を最後にまとめて「えいやっ!」と左側に移して「明日やる」ことにします。(今日中に処理しないといけないものがないか確認した上で)次の日は当日処理する書類が左側にある状態となります。以下繰り返しとなります。

 

タスク管理の欲求段階

元ネタはもちろんマズローの欲求段階

jibun-compass.com

 

そもマズローの欲求段階とは

1.生理的欲求
2.安全の欲求
3.所属と愛の欲求
4.承認の欲求
 自己の自己に対する評価の欲求
他者からの評価に対する欲求
5.(超越的でない)自己実現の欲求
6.(超越的な)自己実現の欲求
優先順に並んだ欲求は、低いものから順番に現れ、その欲求がある程度満たされると、次の欲求が現れます。

 

これはタスク管理にも当てはまるのではないかと思いました。

 

1.やるべきことがやれるタスク管理

まずは、やるべきことがやれていない状況が現出します。この段階のタスク管理は、やることをメモしておくことでも解消できたりします。もう少し立ち入ると各種タスクリストの作成を考えます。タスク管理の入口といえるでしょう。ただし、後々に記す段階に到達したのちにこの段階のタスク管理に戻ることもあります。マズローの欲求段階でいう「1.生理的欲求」「2.安全の欲求」「3.所属と愛の欲求」あたりでしょうか。

 

2.やるべきことをやって、生まれた時間でやりたいことをやるタスク管理

やるべきことができる(これだけでもすごいことですが)ようになり、時間を生み出すことができるようになると、その生み出した時間でやりたいことをやるタスク管理に進みます。やりたいことをやるとモチベーションが高まり、さらにやるべきことを処理していくことに拍車がかかり、やりたいことができる時間が増えます。マズローの欲求段階でいう「4.承認の欲求 自己の自己に対する評価の欲求」あたりでしょうか。

 

3.やりたいことをやって結果を出すタスク管理

やりたいことができていると、やれていたこと自体に満足していた段階から、結果が出ることを求めるようになります。これはこつこつと努力を積み重ねていけるようにした結果を手に入れるということで、マズローの「4.承認の欲求  他者からの評価に対する欲求」「5.(超越的でない)自己実現の欲求」のあたりで、例えば資格試験に向けて勉強し、試験に合格するといったところでしょうか。

 

4.やりたいことをやって思わぬよい結果に結びつくタスク管理

そして最終段階として、やりたいことをやって自分が想定してた範囲外に飛び出してそれが、よい結果をもたらすといったものです。デイル・ドーデン著『仕事は楽しいかね?』のいろいろやって成り行きを見守るにも通ずるものだと思います。知的生産や、Eureka(エウレカ)といったものをイメージします。

 

このような感じで自分がいまどの段階のタスク管理にいるのか確認してみてもいいかもしれません。ただ、環境の変化によっては最終段階に居たのが急に第一段階に戻ることもありますし、タスクの一つ一つをみるといろんな段階のタスクが入り組んでいるのが現状だと思います。そこで、そのタスクが所属する段階が全体のタスクのどれだけの割合をしめているのかバランスを意識してタスク管理をしてみるのも面白いと思います。